トップページ » 壬子会会員からのお知らせ » 「関門国道トンネル建設の歴史」の出版ついて
『関門国道トンネル建設の歴史』を、開通50周年の節目にあたって平成21年3月に出版しました。
建設に従事した我々「関門会」(元建設省関門国道工事事務所OB会 会長 川崎迪一)の生き残り者としての責任もあって、建設の歴史を記念誌として編集・出版するに至った次第です。
関門国道トンネルは昭和33年3月に開通し、昨年の平成20年3月まで50年余の歳月が経ち、関門海峡を東西に繰り返し流れる潮流のように毎日限界交通量以上の3万3千台の車が流れ続けています。
建設には昭和12年の調査工事開始から戦前、戦中を含む21年の歳月を要し、当時内務省下関土木出張所の時代から、建設省九州地方建設局が総力を挙げて完成したものです。海底部は国による直営施工であったことを含めて知る人は今では少なく、寂しい限りです。また本工事に私が着任した昭和27年頃は、まだ戦後の物資欠乏の時代で明日のことも分からない状況にあったことが思い出されます。
世間の最近の風潮として、社会資本が完成後しばらくの間はその整備効果に感謝されるが年月の経過とともに、そこに以前から存在する山河のように自然に形成されたものと同じように認識されて、完成に至るまでのドラマや関係者の苦労、感激が忘れ去れてしまうように思われます。
本トンネルでは山岳工法で施工した長大海底道路トンネルとして、戦後の工事再開時には欧米では当時すでに開発されていた鋼製アーチ支保工やスライディングフォーム、コンクリートプレーサ等、苦悩しながらの機械化施工技術導入で、以後の長大トンネルの機械化施工とその近代化に貢献しました。また世界で初めての軸流式可変ピッチプロペラファンによる横流式の機械換気方式を考案・実施しました。
この記念誌は300冊を土木学会、日本道路協会、トンネル協会等の関係学協会や大学・高校等学校関係、地元福岡県と山口県内の公立図書館に贈呈し、残り300冊を関係者も含めて希望者に有償で頒布して出版費の原資の一部にしています。採用した寄稿文や原稿等の稿料については故人の遺族を含め冊子の贈呈のみとしており、すべてを会員等のボランテイア活動によっています。
本誌はA-4版、136ページ、写真、図面等70数枚からなりトンネルの技術的概要の他、公式に発表されているイベント等の記録・記事を含め、さらに50数人に及ぶ会員の在職中の苦悩や感激等を収録しています。写真の中には、開通直後の昭和33年4月7日に昭和天皇皇后両陛下が行幸啓された時、下関立坑から人道入り口におはいりになり、その後トンネル模型展示室で説明をお受けになった際にっこり微笑まれている写真があります。これは関門会会員の伊吹山 四郎氏が写真班の一員として同行した際、貴重なシャッターチャンスを撮影されたもので、この冊子の最大の目玉といえます。
本誌の内容について若干説明します。
(1)「第2章 建設の記録」の約40ページは、工事竣工後に公式に作成された700ページにも及ぶ「関門トンネル工事誌」(関門トンネル工事誌編纂委員会)の要約版であり、かねてより会員の住友 彰氏がトンネルに関心のある一般の人にも読んで欲しいとの思い入れから執筆されていたものが主体となっています。海峡渡船時代の状況から海峡間連絡をトンネルか橋梁いずれにするかの検討を含めた、調査計画から設計施工までの技術的問題、機械や電気部門等との総合調整の問題や、有料道路事業としての工事再開、償還計画についても記述されています。
(2)「第3章 苦悩と感激の記録」の約40ページでは、関門国道工事事務所の所内誌「関門」(工事竣工後に閉刊)の「最終刊・完成記念特集号」から、詩歌を含み31編の玉稿を収録しています。この中には歴代の工事事務所長5氏の寄稿文があります。初代所長(昭和14年5月~昭和20年5月)加藤 伴平 氏、第2代所長(昭和20年5月~昭和21年7月)富樫 凱一 氏、第3代所長(昭和21年7月~昭和31年4月)中尾 光信 氏、第4代所長(昭和31年4月~昭和33年2月)上ノ土 實 氏、第5代所長(昭和33年3月~昭和33年6月末の事務所閉鎖まで)住友 彰 氏となっており、在職時の時代背景として、重大な問題に対し信念をもって適切に業務を遂行し処理されていることが判ります。
5氏の中でも異色は第3代の中尾 光信 所長で、戦前の調査工事から従事され戦後の工事休眠期間、昭和27年の工事再開から工事最大のヤマ場を乗り越えた昭和31年まで10年間に渡り陣頭指揮を執られたこと、さらに第5代所長の住友 彰 所長は昭和12年から調査工事の下関側責任者となり途中戦後の工事休眠期間中は他事務所へ転任となっていますが、関門国道工事事務所には併任のままで21有余年にわたり戦前、戦中、戦後の完成まで一貫してトンネル工事の調査から設計施工まで幹部として業務を遂行されており、極めて珍しいケースといえます。
その他の人々の寄稿から各人のトンネル開通に至るまでの幾多の苦難や感激があったことが判ります。特に殉職者二人の遺児の作文は今でも涙なしには読めません。労働災害の根絶を誓う必要を改めて痛感します。直木賞作家古川 薫氏の筆による小説「夢の道―関門海底国道トンネル」の原稿執筆のための参考資料の中から紙数の制限で6編を収録しています。その他、50周年を迎えて今日から工事を回顧しての雑感を記していますが、時代の移りゆく早さを今更のように感じます。
(3)「第4章 モニュメント」では記念碑の碑文、慰霊祭、開通式、工事報告、工事施工者一覧表、職員名簿等、主として今まで公式に発表された記録を収録しています。
(4)「第5章 関門会の活動」では関門会の活動経歴、初代所長 加藤 伴平氏 の胸像建立、小説「「夢の道―関門海底国道トンネル」出版までの道のり、関門海峡交通史略観等で構成されています。
最後の社会貢献になれば、との思い入れで既存の貴重な資料が散逸しないよう、一般の方々にも読んでいただきたく編集出版しました。50周年は我らOBにとって長すぎ、せめて30周年であればお元気で活躍されている会員も多く、新旧技術者を交えた座談会開催等によって新しい内容も加えた有意義な企画ができたのではないかと考えています。 末筆ながら関係各位のご健勝をお祈りいたします。
尚、本誌は新聞、土木学会誌(8月号)新刊紹介欄(p.56)でも紹介していただきました。まだ残部が若干ありますので、興味ある方への紹介・推薦を含め購読を希望される方は以下までご一報下さい。
関門会事務局 TEL&FAX 092-891-0450 E-mail::tk-pe.civil@hyu.bbiq.jp
またはNPO法人 西日本建設技術ネット HP:http://www.gijutu.com/book_presen.html
TEL&FAX 092-643-2136 E-mail::t-yoshikawa@gijyutu.com
本稿は「旧交会」会報 第42号 (平成21年11月刊)に寄稿した原稿である。
| 2009年08月20日 15:02 | Posted by 壬子会HP管理|